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014 株式会社 スタッフ・アップ

タレントの個性を生かすマネージメントを行う「スタッフ・アップ グループス」
“フリー素材アイドル”や“プレゼン用ショートムービー”など
アイデア満載の戦略でタレントをPR
”

NHK放送センターのほど近く、渋谷区神南のビル4~6階にオフィスとレッスンルームがあります

事務所探訪第14回は、「スタッフ・アップ グループ」です。昭和56年に創業し、2年後、株式会社スタッフ・アップが設立されました。岡江久美子さんや秋本奈緒美さん、三船美佳さん、酒井和歌子さん、筧利夫さんなど、長く在籍されている方が多いのが特徴です。Sharo(シャロ)さんやMika+Rika(ミカリカ)さんなどアーティストも多く所属しています。

今回は、代表取締役の戸張立美さんに、マネージャー時代のエピソードや、独自のマーケティング戦略、俳優養成における信条まで、さまざまなお考えをうかがいました。

■ 俳優を生かすために奔走したマネージャー時代

その人柄とマネジメント力で、多くの実力ある俳優や監督、作家を引き寄せてきた戸張立美さん

最初の頃は、僕がマネージャーと経理を兼務、もう一人のデスクと二人体制。岡江久美子さんから始まり、瑳川哲朗さんや水野久美さん、高品格さんが入ってきて、事務所として形になっていきました。

高品さんは、日本テレビのバラエティ番組『今夜は最高!』の現場で、僕が水野さんのアテンドをするのをご覧になっていたそうで、「戸張さんみたいな人に(マネージャーを)やってもらいたいな」と、来てくれることになったのです。

でも、しばらくは、なかなかいい役をとってくることができませんでした。NHKの銀河テレビ小説『下町探偵局』でも、酒場の無口なおやじ役で、愛川欽也さん演じる主人公に、「なあ、おやじ」と言われて、「へい」と答えるだけで、ほとんどセリフのない役でした。それでも、高品さんはリハーサルのときからメモをびっしりとっているのです。何を書いているのか聞いてみたら、「このおやじはきっと、客と話すのが苦手なんだよ。何で苦手かというと、昔は夫婦でお店をやっていて、接客は女房の仕事だった。それが女房を亡くして、自分で接客もしないといけなくなったんじゃないか──戸張くん、こうやって芝居を考えていくと、どんな役でもおもしろいんだよ」と。

そんな高品さんに何とかしていい役を見つけたいと思っていたとき、映画『麻雀放浪記』の話をいただいたのです。主人公に麻雀を教える出目徳はぴったりの役で、これはどうしてもやってほしいと思いました。ところが当時、日本テレビ系列時代劇『長七郎江戸日記』を東映京都撮影所で撮っていて、スケジュールが厳しかった。東映の担当者に無理だと言われ、映画のプロデューサーにも「格さんにやってほしいとは思うけど難しいでしょう」と言われましたが、何度も京都に行ってお願いしました。

事務所の随所に見られる社名ロゴ。カタカナ表記にした場合の「スタッフ・アップ」という社名は、跳ねている印象にしたいと左払いの字画を含む字形でそろえたそうです

その間にリミットが近づき、映画関係者もしびれを切らして、ほかのキャストを当たり始めました。「間に合わなくなるから、今回はもう……」とも説得されました。普通ならそこで断念するでしょう。でも、どうしても、あきらめきれませんでした。「もう少しだけ、待ってくれ」と頼み込んで、“これが最後だ”という覚悟で京都に向かいました。すると、僕の真剣な気持ちが東映の担当者に通じたのか、近くの喫茶店で腰を据えて、もう一度話を聞いてくれたのです。「ここだけ何とか撮影のスケジュールを空けてほしい」とお願いすると、「ほな、やりなはれ」と。自分がすべて責任もってやるから、という意味ですよね。本当にありがたかったです。すぐに東京に戻り、映画のプロデューサーに会って報告しました。「それなら」ということで、出目徳役をやれることになったのです。もし、ほかのマネージャーだったら、高品さんを生かし切れなかったのではないかと自負しています。

高品さんはそれまで500本もの映画に出演していたものの、無冠のバイプレーヤーでした。それがこの役で、日本アカデミー賞の最優秀助演男優賞、報知映画賞、毎日映画コンクール、キネマ旬報ベスト・テン、ブルーリボン賞、ヨコハマ映画祭の助演男優賞を受賞しました。

高品さんも、僕が苦労したことをわかってくれていたようで、授賞式で「戸張さんが苦労してくれたおかげです」と言ってくれました。当時のことを思い出すといつも泣けてきてしまいます。

■ 少数精鋭で多数のタレントのマネジメントをこなす

グループ内には「スタッフ・アップ」のほかに、5つの会社があります。「スタッフ・ポイント」は田辺誠一さん(現在は広告契約窓口のみ)、「スタッフ・テン」は筧利夫さんが入ったときにつくった会社、「スタッフ・ワン」は、30周年記念オーディションで初めて一般公募した際に採用した11名の受け皿としてつくった会社です。そのほか、大和田美帆さんをはじめとした「スタッフ・プラス」、「スタッフ・アップ グループ俳優スクール」の運営をしている「スタッフ・アネックス」があります。

現在のスタッフ体制は、経理1名、デスク2名、マネージャー7名(平成31年1月現在)。人数が少ないので、一人にかかる仕事量は多いですね。

オフィスのエントランスに表示されているグループ会社
4階にあるオフィス。開放的なスペースが、スタッフ同士のコミュニケーションを円滑にしています

■ プレゼンに役立つ! 名刺代わりの“ショートムービー”を制作

ショートムービーの制作風景

元テレビ朝日プロデューサー・監督の松本健さんや、外部の監督・作家にも協力をお願いして、ショートムービーを制作しています。なぜかというと、俳優のプレゼンに使うのです。普通、プロデューサーに俳優を売り込んでも、「じゃあ会って演技を観てみましょう」とは、なかなかならないでしょう。今までの仕事を見せたくても、新人にはほとんどない。そこで、芝居がしっかり観られる5~10分程度のショートムービーを作って、YouTubeチャンネルにアップしておけば、プロデューサーの手の空いた時間に観てもらえるというわけです。

ただ、これは諸刃の剣で、演技が上手いか下手かが一目瞭然になってしまいます。芝居が徹底的によくないとアピールにならないので、一度でき上がった作品でも撮り直すことが多く、まだ公開できていない作品がたくさんあります。これからもおもしろい作品を作って、そのうちに「スタッフ・アップのショートムービーがおもしろいらしいよ」と話題になればうれしいですね。

ショートムービーにも出演している若手俳優の中でいちばんの注目株は、男性では、竪山隼太さんです。蜷川幸雄さんが作った「さいたまネクスト・シアター」の出身なんですよ。5月9日から始まる舞台『ハムレット』に出演します。女性では、竹内佳菜子さん。モデルから抜擢されてTBSテレビ系列のバラエティ番組『王様のブランチ』のリポーターを4年間務め、注目されました。現在は役者をめざして勉強中です。

■ 仲間とともに生み出した“フリー素材アイドル”

双子のヒップホップユニットのMika+Rikaは、もともと姉のMikaのほうが、平成25年の30周年記念オーディションを受けに来て、ドラマにも出ていたんです。そのあと、双子の妹(Rika)と二人でヒップホップをやっていると聞いて、「だったらうちで(ヒップホップユニットを)やろうよ」と提案したのです。

どうしたら知名度を上げられるか、いろいろと試行錯誤していったうちのひとつが “フリー素材”。肖像権を放棄して、写真をフリー素材として無料でダウンロード・加工できるようにしようという試みです。本人たちも企画会議に参加して、電通さんのクリエーターと企画を出し合う中で生まれたアイデアでした。

“フリー素材アイドル”の取り組みが評価され、国内外で多数の賞を受賞しました

平成26年から“フリー素材アイドル”をコンセプトに活動を始め、1000カット以上の写真を撮って、アマナイメージズでアップしていただいたのですが、すごく反響がありました。コードアワード2015、2015 55th ACC CM FESTIVAL、釜山国際広告賞2015、Yahoo! JAPAN インターネット クリエイティブアワード2015など、たくさんの賞をいただきまして、平成30年は総務省後援のAMDアワードで年間コンテンツ賞「優秀賞」をいただきました。

それから、平成28年にフリー素材の写真集『そのまま使える写真集』というのを出しました。ポスターやポストカードなど、さまざまな素材を入れて“おもちゃ箱”のように楽しめる工夫を凝らしました。渋谷のTSUTAYAに置いたのですが、フリーペーパーみたいに「ご自由にお持ちください」と配布するのではなく、レジを通して購入するという形にしました。レジに持っていくと「\0」と出るんですよ。おもしろいでしょう?

今は、グリーンバックを使った企画が進行中です。この企画を思いついたのも電通さんのクリエーターですが、もう“仲間”といっていい存在です。こちらからお願いしなくても、何か思いつくと自主的に提案してきてくれるんですよ。じつは、電通さんの新卒採用広報プロジェクトで、「Mika+Rikaのフリー素材を使って企画を考える」という課題が出されたそうで、それでほとんどの新入社員の皆さんが彼女たちを覚えてくれて、応援してくれています。

ただし、フリー素材はある程度知名度が上がったらやめるつもりで、期間限定としていました。ところが次々に賞をいただいたおかげで、なかなかやめられない状況です(笑)。今は有料の仕事もやっています。無料なのはフリー素材サイトにあげている画像や音声だけなので、新たに撮影する場合は撮影料だけいただいています。それでも「独自のものを作りたい」と声をかけてくださる企業が増えてきていて、家庭向けの電力サービス「まちエネ」の親善大使や、トマト銀行やXperia(ソニーモバイル)のCMなどに起用していただきました。

最近では、Mika+Rikaは「全国広報PR会議」で講演・パネルディスカッションをしたり、「自治体総合フェア2018」では地方自治体のシティプロモーションをテーマに専門家とトークセッションをしたりと、マーケティング評論家のような仕事も来ているんです。二人でパネルを作って解説していますよ。今後は、本の出版や情報番組などの仕事も視野に入れて活動していくと思います。

■ 映像に特化し、実践に即したレッスンを行う俳優スクール

スタッフ・アップ グループ俳優スクール事務局長の原田裕さん。スクールの運営を一手に担っています。「スクールが開校してから約2年。自分で演技プランを考える力が鍛えられてきて、自立性の高い俳優が育っています」

平成28年には、スタッフ・アップ グループ俳優スクールを開校しました。いい俳優に育ってくれればと考え、レッスン料は月謝制にし、リーズナブルに設定しています。目的は新人発掘のためなのですが、スカウトと違って何がいいかというと、本人が自分の意志で来るということです。本人の「やりたい」という気持ちがいちばん大事。スクールに入る前に面接があり、とくに人間性を見ています。年代は18~25歳の間が多いですね。最近、中高生コースも募集を始めました。

レッスンはワークショップ形式で、8人定員の少人数制なので、しっかり芝居ができます。特色としているのは、現役の映画監督や、テレビのディレクターもしくはプロデューサーが講師を務めていること。さまざまな俳優さんを見てきているので、いろんな演技の仕方を知っていますし、スクール生の個性を引っ張り出すことができるのではないかと考えています。校長である松本健さんのつながりで、素晴らしい講師の方に来ていただいています。ご自身も、TBS系列ドラマ『金曜日の妻たちへ』を撮っていた名監督なんですよ。

5階のレッスンルームは音響設備も充実しており、おもにダンススタジオとして使用。タップボードもあり、タップスクールを行っています。写真スタジオとしても利用でき、Mika+Rikaさんのフリー素材写真はこちらで撮影しています

舞台ではなく映像の演出家にこだわるのは、演出の仕方が違うから。テレビや映画では、カメラを意識した芝居が必要になってきます。実際にカメラを置いてエチュードを行う講師もいて、「ここにカメラがあるから」「今、アップになったから」と言いながら進めています。あくまで、映像にふさわしい演技ができるようになるのが目標です。

また、スクール生の芝居を見ているので、講師自身が監督としてドラマや映画、CMを作るときに推薦してくれることもあります。監督にとっては、どんな芝居をするのかわかっているので安心ですし、呼ばれたほうも、知っている監督だから、のびのびと演技できる。これは、俳優をめざすスクール生たちにとって大きなメリットだと思います。

レッスンルームの隣にはメーキャップルームやフィッティングルームも完備
レコーディングスタジオとミキシングルーム。アーティストのレコーディングや、Mika+Rikaさんのフリー素材の音声なども録音しています
6階のレッスンルームは、おもに芝居の練習に使用。オーディション前の稽古や、日々の発声練習など、多目的に利用することができます
レッスンルームに隣接したミーティングルーム。ガラスの扉で仕切られており、レッスンの様子を見渡すことができます

■ 舞台やライブも企画・制作。次は音楽を創りたい!

スタッフ・アップpresents
ミュージカル『魔法のオルゴール』

舞台の制作は、自分の企画で5つ上演しました。最後に企画したのが、平成24年にCBGKシブゲキ!!で上演したミュージカル『魔法のオルゴール』で、いちばん印象に残っています。ストーリーの原案から曲のイメージまで自分で手がけました。毎日稽古場に通って、役者やスタッフと語り合いましたね。元宝塚歌劇団宙組娘役トップの陽月華さんに主演をやっていただいて、本当に素敵なミュージカルができました。

ライブでは、赤坂BLITZで、Sharo(シャロ)というアーティストの単独ライブを成功させました。バーレスクショーをイメージしたライブで、満席となり、大盛況のうちに終わりました。秋本奈緒美さんもライブをよくやっていますし、自前のレコーディングスタジオがあるので、今後は音楽も制作できたらと思っています。

 

 

 

 

スタッフ・アップ グループ ホームページ http://www.staff-up.net/
スタッフ・アップ グループ俳優スクール https://staff-upschool.jp/
Mika+Rikaフリー素材サイト http://mika-rika-free.jp/

 

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